第14話:短期滞在者免税_vol.1

国際税務の最前線を紹介する
「Rino's Tax Diary」

第14話:短期滞在者免税_vol.1

「外国人が日本に来たときに、滞在期間が183日うんぬんだと日本で課税されるとか、されないとか聞いたことがあるんですけど、どんな内容なんですか?」ドイツ系の食品卸会社の経理担当である矢崎さんが聞いてきた。
「どなたか外国人の方がいらっしゃったんですか?」リノは聞き返した。
「ええ。なんかうちって最近社長が外国人に代わってから、しょっちゅう外国人が出たり入ったりするようになって、給与を支払う時にどうしたらいいかよくわかんないことがよくあるんですよ。」矢崎さんはほとほと困っている様子だ。
「今回、問題になっている方はどこの国の人ですか?」
「ドイツ人なんですけど。なんか子会社の担当者向けの研修をするとかいう名目で来たらしいので、少ししかこちらにいないみたいですよ。」
「具体的には、いつこちらに来られて、いつ帰る予定のですか?」
「つい先週末に日本に着いたって言っていました。2~3か月後に帰るみたいですよ。」
「給与はどこが負担するんですか?」リノはさらにつっこんで聞いた。
「短期滞在なのでドイツ本社が支払うと聞きました。日本で働いているのにこっちで課税されなくていいんですか?」矢崎さんは訳が分からないという顔をしている。
「結論から言いますと、この方は日本に滞在している期間が183日以下ですので、日独租税条約により日本で働いた分の給与については、日本では課税されないんですよ。これがもし、租税条約がないと、原則つまり国内法によりますので、日本で働いたことに対してもらう給与は、国内源泉所得に該当することになり、日本で課税されることになってしまうんです。そうなると、この方の場合は3か月弱の滞在になりますので、非居住者ということになって、20.42%課税されることになります。ただ、ドイツ払いなので、源泉徴収することができないので、準確定申告して給与の20.42%納税するという面倒な手続きをすることになってしまうんです。」リノは出来るだけゆっくりと説明した。
「へえ。原則やら何やらあるみたいですけど、要するに租税条約がある場合、183日以下だったら免税と覚えておけばいいんですね。」矢崎さんは自分なりに納得してそう言った。
「簡単に言ったらそうですが、相手国の租税条約によって183日の認識の仕方が異なったり、給与の負担状況とかで短期滞在者免税の規定を受けられないこともあるんですよ。」リノは付け加えた。
「えっ、そうなんですか。う~ん、やっぱりそんな簡単にいかないんですね。」矢崎さんは残念そうだ。
「まあ、今回の場合は免税でいけますけどね。例えば、もし今回のケースで御社が給与の支払いをするとなると免税にならないんですよ。」
「なるほど。要するにいちいち確認しながらやらないとだめだってことですね。」矢崎さんはそう言いながら、リノが作業している部屋から出て行った。
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